「いつ魔王が目覚めるかわかりません・・・。とりあえず、拘束だけでも・・・」



アドルフが涙をぬぐい立ち上がった。
チチ・トトが動きを塞ぐために用意していた鎖を手に魔王の身体に近づく。




「こんな拘束など、すぐに破られてしまいそうですが・・・。術を施せば少しは枷になるでしょう」

「はい・・・」



エマも、涙をぬぐいアドルフを手伝おうと体を浮かせた。
その時。


ピクッと魔王の手が痙攣するのを、エマは見逃さなかった。


「マオさま・・・?」



思わずかけてしまった声。
アドルフはハッとして魔王の身体を見た。



「離れてください!魔王が、目覚めるかもしれません!」




この状況で目覚められたら分が悪い。
一瞬で自分たちなど殺されてしまうだろう。


そうなっては、誰も魔王を止めることなどできなくなってしまう。




ピクピクっと、反応を示す魔王の身体。
嫌な緊張が辺りを走った。