「どうして、なにも見つからないんだ・・・」



あちこちに本の山が積み重なる。
幾度も読み込んできた本をもう一度一から見直してみても、これといった記載は見当たらなかった。




「こういうものは、誰か研究者がいて書かれているものですから。誰も、そういう方法を使おうなどと思ってこなかったんでしょうね」

「でも、私たちはそれをやろうとしているんです。既存の本を頼るだけではいけないんですね」




アドルフの落胆の声に、エマの張り切った声。
エマのその声に、アドルフは驚いたように目を丸くした。



「エマがそんな風に、張り切る姿が見られるなんて思いませんでしたよ」

「あ・・・」

「まるで別人ですね」




そう言われ、エマは恥ずかしそうに頰を染めた。
こんな風に何かに夢中になったことなんて、確かになかった。


全てを諦め、なにも感じないように心を無にしてきたから。