「バカな奴らだ。おかげで、ようやく出てこられた」




そういって笑う声は、もうすっかりマオのそれではなかった。




「マオ・・・さま・・・」




アドルフが、絶望的な声を放つ。
ガクッと膝をおり、打ちひしがれたような表情で。




「何度も揺さぶりをかけ、ようやく隙ができた。これでもう、この身体は俺様のものだ!」




両手を空高く広げ、歓喜の声をあげる魔王。
しかし、次の瞬間バチバチと体の周りを火花が散った。



「なに・・・!?」




その火花は魔王の身体を包み込むと、錠のように魔王の身体の自由を奪った。





「く、く、くははははは!なるほど、最後の抵抗というわけか!こんなもの、ただの時間稼ぎ。俺様の力が全て戻ればこんなもの容易く外せるというのに」





自由を奪われてなお笑い続ける魔王に、誰も声を発することができなかった。
信じられない、信じたくないこの現実に目を反らしたくなる。