愛しの魔王サマ



それでも、行くところなんてないし、なんとなくそのままその城に居ついた。
屋根のあるところで眠れるのは正直ありがたかったし。
ここにいれば、食いっぱぐれることもない。



どんなに惨めでも、今更そんな思いどうってことなかった。




「ルカ。巡察に行く。ついて来い」

「はい」



魔王さまは、時々巡察だと言って魔界を回る。
目覚めたばかりの魔王さまは、魔界の事をまだよく知らないらしい。


魔界なんて回ったところで、面白いことなんて一つもないのに。




弱肉強食。
強くなければ生きていけない。


俺みたいな半端者は、ただ怯えて隠れているしかない。




腐った世界。




「まおーさまはどうして俺なんかを家来にしたんですか?」

「どういう意味だ?」

「まおーさまも、わかってるでしょ?俺が中途半端でできそこないだって」




誰もが皆、口をそろえてそう言った。
変化もできない無能だって。


出来損ないの、必要のない存在だって。