「まったく、マオさまは突然いなくなったかと思えば変なものを拾ってきて・・・」
俺を変なもの呼ばわりするのは、アドルフとかいう魔王の側近らしい。
呆れたように言いながらも、俺の手当てを全て済ませてくれた。
「あの、ありがと・・・」
「いえ。マオさまのご命令ですので」
「マオさまではない!魔王さまと呼べと言っているだろう!」
「はい、できましたよ、マオさま」
“マオさま”と強調するようにアドルフがそう言って救急箱を片付けに去った。
魔王さまは不服そうに眉を寄せたがそれ以上蒸し返すことなく俺の側に来る。
「お前、名は」
「・・・ルカ」
「ルカ。お前、帰るところはあるのか」
「・・・俺は、一人だから。群れからは追い出された」
「そうか、ならここにいるといい。お前を俺の家来としておいてやる」
「え・・・」
訳が分からなかった。
俺なんかを家来にして、なんの得がある?
そんなの、見るからにわかることなのに。
皆がバカにした。
変化のできない出来損ないの俺。
もしかして、憐れんでるのか?
そんな憐み、いらない。


