愛しの魔王サマ



探し出してきた、魔剣を掴むと一気にアドルフの脇腹に突き刺した。




「っ!?」

「きゃっ!?マオさま!?」




この程度なら、こいつなら死ぬことはない。
しばらくは痛みに苦しむだろうが、きっとすぐにその傷も癒えるだろう。




「ま、お・・・さま・・・?」




苦痛に歪めた顔。
グッと押し返すように肩に添えられた手。
俺は剣を持っていないほうの手でその手を握った。



「すまない」




そう小さく告げると、アドルフの肩を押し返し剣を抜き去った。





必要なもの。
魔王同等の力を持つ、純血の魔物の血。




それは、おそらくアドルフ意外にいない。



そして、かつての勇者の血を引く者。
それは、エマだ。





魔王の力を、これまでほとんど使ったことはない。
必要なかったからだ。


最期に、使うことになろうとは。