愛しの魔王サマ



「マオさま、話というのは・・・」




エマがアドルフを連れ戻ってくる。
少し躊躇いがちに尋ねるアドルフ。


最後まで、機嫌を伺うような様子は結局変わらなかったか。
アドルフは、俺の知らない間も、初めからずっと“魔王”の側にいて、すべての事を見てきた。

きっと、幾度も絶望を味わい、希望を見つけ、また絶望し。
それを繰り返してきたのだろう。

その身体全てに責任を背負い込み。




「アドルフ、これまでずっと俺についてきてくれた事、感謝する」

「え・・・」

「俺の知る3年だけのことではなく、これまでの魔王の側にいたことも、だ」

「ま、マオさま・・・?突然何を」





それ程、自分を犠牲にしてまでも、もうこれ以上従う必要はないのだ。




「お前ももう、自由になってもいい」

「わ、私はそんな事、望んでいません!マオさまは、ルカたちに暇を出しても、私だけは側にと言ってくれたではないですか!それなのに、今になってそんな・・・」

「お前だけに暇を出さなかったのは、ただ俺の決意にお前の存在が欠かせなかったからだ」

「決意・・・?」

「それさえ、果たせればお前の存在はもう、必要ない」





どこへでも、自由に旅立つといい。
これから俺がすることを恨んでくれていい。

恨んで憎んで、俺の事なんて忘れてしまえばいい。
非道な俺だと、蔑んでくれてもそれでいい。