「エマ、ちょっといいかしら」

「はい。奥様、いかがいたしました?」




人間界にトマと共に戻って来たエマは、トマが見つけてきた仕事場であるお屋敷で使用人として働いていた。
これまでの奴隷のような扱いではなく、真っ当な待遇の仕事だった。

恵まれた主人、これまでとは違う環境に戸惑いながらも懸命に日々の生活に慣れようと必死だった。



「庭に、新しく花を植えようかと思うのだけど、どんな花がいいかしら」

「それは、奥様のお好きな花を・・・」

「ええ。それはそうなのだけど、いつもそれでは代わり映えがしないでしょう?だから、エマに聞いてみようかと思って」

「そ、そうですか・・・」




優しい奥様は、いつもこうしてエマを気遣い話をしてくれていた。
使用人にまで気を配ってくれる優しさに、エマは時折マオの事を思い返していた。

口は悪く自信家な口ぶりだが、とても優しく、思いやりのあるイメージの中の魔王とはかけ離れた存在だったマオ。

自分はマオに救われたのだ。