愛しの魔王サマ



なにが、一方にとっては正義でも見方によっては悪になることもある、だ。



見方を変えたところで、俺がしてきたことは、悪でしかないではないか。
人間どもが、恐怖して当然、その拳を振り上げて当然。




「では、人間たちを追い返したら迎えにあがります!」

「・・・傷つけてはならんぞ」

「・・・はい。本当に、まおーさまは優しいですね」




優しくなどない。
自分のしてきたことを忘れ、棚に上げ、こうして逃げ隠れているのだから。

閉じられた扉。
薄暗い部屋。



やけに静かで、自分の呼吸の音が響く。




孤独だ。




以前隠れた時は、ああ、そうだ。
エマが一緒だったのだ。

あの時は、不安を紛らわせようといろいろと話をした。



ああ、懐かしい。
不思議と不安は消えたのだ。




「・・・は、・・・は・・・・」





息が、上がる。
ああ、ダメだ。




思考が、堕ちていく。
暗闇へ。



なにもない、奈落の底へ。