愛しの魔王サマ



もしそれがうまくいけば、どうにか覚醒せずに済むかもしれない。
そんな淡い期待を抱き、薬を作り始めた。



そして。
その薬が完成したころ、数千年の時を経て魔王さまが再び封印から目覚める日がやってきた。






「お久しぶりです。お迎えにあがりました」



恭しく頭を下げ、目を覚まされた魔王さまの前に立つ。
それが、今現在の魔王さまである、マオさまだ。




「魔王さま」





私は決めていた。
今回は、やたらと魔王さまだと囃し立てることはしないと。
立場だけは用意して、魔王としての自覚をあまりもたせたくないと。

力を求めてもらっては困る。


だから、今回は前回とは違い、すべてを話すことはやめた。
全ての危険から、私が回避してみせる。




「マオ・・・?なんだ、マオとは誰の名だ?」

「マオ・・・?いえ、マオ、ではなく魔王・・・。いえ。マオさま。あなたのお名前です」





それは単なる聞き間違いからだった。
だが、そういえば、魔王さまの名前すら知らなかったのだ。
いや、もともとあったのかすらわからない。

ならば、そうだ、付けてしまおう。


マオ=ブラッドフィールド
そう名付け、魔王さまとしてではなく、マオさまとして存在してくれればいい。





「・・・ふぅん。ならば、貴様の名は」

「え?」