封印された魔王さまの側に、幾年も、幾年も。
どうか、この平穏が続きますようにと。
ただ、祈りをささげる事しか。
しかし、それはやはり人間の施した封印。
100年とせぬうちにその封印は解かれることとなった。
「お前は、誰だ」
しかし。
目を覚ました魔王さまは、まるで何も覚えてはいなかった。
自分が何者であるのかも、どうして封じられていたのかも。
ああ、これはチャンスではないか。
“魔王さま”として相応しくなっていただくに、とてもチャンスではないかと。
「私はあなた様の側近。あなたは、この魔界を統べる、魔王さまです」
「・・・魔王?この俺が?」
怪訝な顔をする魔王さまを、私は一から育て上げた。
魔王とは何か。
私が思い描く魔王さま像を叩きこんでいった。
しかし、それも長くは続かなかったのだ。
初代の魔王さまのあの気性が、心の奥底に封じ込まれていただけで消え去ったわけではなかった。
その気性は、発作のように時折姿を現してはこの魔界を脅かしていったのだ。
繰り返されていく。


