「おい、エマ――――、っ」



無意識に、もうここにはいないはずの名を呼びハッとする。
これで、何度目だろうか。


忌々しく舌打ちをし振り切るように頭を振る。




「マオさま、いかがいたしましょう」

「・・・疲れたから休みたい。茶の用意を」

「かしこまりました」



そんな俺の様子を何度も目の当たりにし、見慣れた様子のアドルフは微かな笑みを浮かべ茶の用意に席を外した。





調子が狂う。
エマが出ていってから1週間。


こんな風に、突然思い出しては頭を悩ませる。
こんな事、予想だにしていなかった。




アドルフは、すぐに茶の用意を済ませ戻って来た。
テキパキと手際よく準備し俺の前に差し出す。

ふんわりと香る紅茶。
俺は一つ息を吐いた。