愛しの魔王サマ



「本気ですか?」

「ああ」




俺は、迷いなくしっかりと頷いて見せる。
アドルフは動揺したように目を泳がせ、言葉を選ぶように息を詰まらせた。



「な、なぜ」

「なぜ?あれも人間だろう。人間は、人間の生きやすい場所がある。あいつの過去は、よいものではなかったのだろうが、弟がいればそれも変わるだろう」

「だからと言って」

「アドルフも見ただろう。エマが弟と接する様子を」





アドルフから受け取った書類に目を通しながら、俺は話を続ける。
冷静に務め、パラパラと書類を捲る。




「あのように、自分をさらけ出すエマをこれまで見たことがあったか?」

「それは・・・、ですが。初めを思えば、とても心を開いているように思えました」

「ああ。時をかけてあそこまでな。だが、あの弟は一瞬であそこまで素に戻したのだ」

「・・・それは、そうかもしれませんが・・・」