「マオさま、いつまであの男をここに置いておくつもりです?」
執務室に戻り、アドルフと二人きりになると神妙な面持ちでアドルフが言った。
いつか聞かれると思っていた。
俺が勝手に決めたことを、アドルフは拒むことはしない。
だが、すべてをすんなりと受け入れられるわけではないことはわかっていた。
「・・・そのうち人間界へ送り返す」
「そのおつもりなら、私はなにも言うつもりはありませんが、仮にも彼は理由はなんであれ人間をまとめ上げ攻め込んできた相手なのですから」
「わかっている」
「たとえエマの身内であっても。あまり心を許しすぎるのはいかがなものかと」
アドルフがそういうのだから、きっとそうなのだろう。
俺の判断基準はいつだってそうだ。
俺の知らないことを、アドルフは知っていて。
俺の知らない俺の事も、アドルフは見ていて。
だから。
アドルフは間違ったことは言わない。
「その時には、エマも一緒だ」
「はい?」
「エマも、一緒に人間界へ返す」
俺の言葉に、アドルフは息をのんだ。


