マオが席を立った室内。
相変わらず、トマは顔を顰めたままルカをじろりと睨みつけながら食事を続ける。
ルカは、マオが出ていった扉を振り返り、気配が消えたことを確認するとトマに向き直った。
「おい」
「・・・なんだよ」
いつになく低い声に、驚いたのはエマだ。
いつも明るく声高々にマオにまとわりついているルカの、今まで聞いたことのない声色。
「俺たちの事をいくら化け物呼ばわりしたって構わない。だけどな」
「・・・っ」
「まおーさまの事だけは、悪く言ったり、危害を加えることは、絶対に許さないからな」
「っ」
「その時は、命はないと思えよ」
射抜かれるような、冷え切った瞳で見据えられ、トマは震えあがる想いだった。
なんとかコクリコクリと二回ほど頷くと、ルカは満足そうに二カッといつものように笑って身体を離した。
「ルカさま・・・。弟が、本当に申し訳ありません」
「ん?なにがー?エマは何も悪くないでしょ。それに、まおーさまの邪魔さえしなければ、おれはそれでいいんだし」
先ほどの雰囲気はガラッと消え、すっかり元通りのルカ。
それほどまでに、マオに対して忠誠心が強いのだと、改めてエマは感じたのだった。


