「んー、なんか、似てないなーと思って」
「は!?似てんだろ!顔とか!」
「まぁねぇ。どことなく顔は似てる気はするけど。性格なんて真逆じゃん。エマは礼儀正しくて、常識人だけど。君、荒々しくて非常識人って感じ」
ルカは、笑顔でシレッと言いのける。
まったく、悪気なくズバズバとものを言う。
ここでは、気心の知れている奴しかいないから目立たないが、ルカは初対面の相手や、心を許していない相手に対しては、多少警戒心が強い。
人懐こく寄っていっているように見えて、しっかりと一線を引いている。
そして、相手が敵か味方か、信用するに値するかをしっかりと見極めているように思える。
そう言えば。
エマに対しては結構すんなりと受け入れていたな・・・。
なぜだ?
「兄弟だからって、性格までまるっきり一緒なわけないだろ。それに、俺はお前ら化け物から姉ちゃんを護らないといけないんだからな」
「トマ!いい加減になさい!」
エマが珍しく怒鳴り上げる。
トマがいると、今まで見たことのないエマが見れる。
俺は、それぞれの様子を傍観する。
「マオさま。確認していただきたい書類が・・・」
「・・・ああ。行こう」
アドルフの声に立ち上がり、部屋を後にする。
相変わらず背中に賑やかな声を聴きながら執務室へと向かった。