愛しの魔王サマ



「俺の事は気にするな。お前は俺のプレゼントとしてここに来たが、それも気にすることはない。お前がいるべき場所に戻ればいい」

「マオさま・・・」

「別に、お前がいなくなったところでなにも変わりはしない。以前の生活に戻るだけの事」




なんの問題がある。
そうだ、そのはずだ。

それなのに。
どうしてこんなに胸が重いのだろう。




「・・・私は、マオさまのお側を離れません」

「姉ちゃん!?」

「私は、・・・私は、マオさまのお側に」




力強くそう言い切るエマ。
その言葉を聞き、安堵している自分。




「トマ。ごめんなさい。あなたの事は大事なの。私もずっと一緒に暮らしたいって思ってた」

「だったら!」

「でも、私はマオさまにお仕えすると、ここに来るときに決めたの。マオさまにお仕えしてその気持ちは強くなった。だから、今あなたと一緒に帰ることはできないの」

「どうしてそんな魔物なんか!人間界でだって仕事はできるだろ!」

「あのお方は、今まで仕えてきたどんな人間よりも優しくて暖かい人よ。そういう人には心から仕えたいと思うのが当然でしょう」