愛しの魔王サマ



「アドルフ。・・・エマを呼んで来い」

「・・・よろしいので?」

「いい。早くしろ」




エマは、一度も帰りたいと言ったことはなかった。
だから、こんな風に待っている者がいるとは思っていなかった。

いるのなら。
在るべき場所に戻るのが筋であろうな。





「ほ、本当に返してくれるのか?要求は・・・」

「ああ。要求などない。あいつがいる場所があるのなら、そこに戻るのが当然の事であろう」

「・・・ありがとう」




呆然と呟くトマは、思ってもいなかったようだった。
俺の事を極悪な魔物だとでも思っていたのか。

人間の中の俺のイメージは、そうなのだろうか。



人間・・・。
俺は、人間を見たのはエマが初めてだ。


もしや、過去の俺は、会っていたのかもしれんな。
人間のそのイメージは、その時に抱かれたもの・・・?



そうだとしたら・・・。




「マオさま・・・、お呼びで・・・」




思案していると、戸惑いがちに呼びかける声にハッとした。
アドルフが呼んできたエマがこちらへと向かってくる。