愛しの魔王サマ



「私の名は、トマ=ロストと申す者」

「・・・どういう風の吹き回しだ。この間は攻め込んできて、今度は接見などと」



男は一人で、まだ幼さの残る少年だった。
若いとは聞いていたが、まるで子どもではないか。
これは、予想外だったな。




「単刀直入に申し上げます。我々から奪ったものを返していただきたい」



真っ直ぐ射抜くような目。
意志のこもったその瞳が俺を見る。



「奪ったもの?貴様ら人間から奪ったものなど・・・」

「エマ=アントナ・・・」

「・・・!?エマだと?」




少年の口から発せられた名前に目を見開く。
エマは今、この部屋の外で待たせている。



「エマ=アントナは私のたった一人の家族。私の姉です」

「・・・何」