愛しの魔王サマ



部屋を飛び出し、廊下を走る。
急いた気持ちが拳を握らせ、一層血がポタポタと床に道を作っていく。



怖い。
そんな感情があるとは思わなかった。


自分が何者かわからないなんて。
そんな事は初めから当たり前の事だった。


でも今は。
それが酷く怖いのだ。



俺はなんで、誰で、誰かの、なんであるのか。




俺は、ここにいていい存在なのか。





その答えが知りたかった。




「エマ!」




先の廊下にその姿を見つけ、枯れるほどの声で叫んだ。
急く気持ちに足がもつれ前のめりに倒れていく。




「マオさま!」