成瀬から私へと視線を移してこちらを見つめる有馬取締役の瞳は、まるで氷の刃のように尖っていた。
(な、なんか一気に居心地が悪くなったんですけど、どういうこと!?)
やはり平社員が言いたいことを言い放ったのが悪かったのだろうか。
背中にじっとりと汗が浮き、思わず肩をすぼめる。
そんな私の前に成瀬がずいと立ちはだかり、有馬取締役に向き合う。
「ダメですよ。この人はあなたにはあげないから。僕がもらうことにもう決まってる」
「春人、勘違いしていないか? なにも彼女を私のものにしようと言っているのではない。ただ秘書として私の補佐をしてもらうと、あくまでもビジネスの話だ」
「いいや、怜司さんは気に入らない人を側に寄せ付けない人なんだ。こんなに性急に秘書にしようとするなんて、絶対に先輩を気に入っているんだ!」
成瀬が言い切った途端に、有馬取締役が口を閉ざし眉間に皺を寄せ、何かを考えるようにあごに手を当てる。
それからすぐに彼は顔を上げて言った。
「自分では自覚がなかったけれど、そうかもしれないな。確かに柴崎さんのことは小気味良い人だとは感じているようだ。私に対しても物怖じせず、きちんと自分の意見を言える。それに清楚で優しい雰囲気。……今、気がついた。あなたは私の妻にふさわしい人かもしれない」
「はあぁぁぁ!?」
成瀬と私の悲鳴にも似た驚きの声がピタリと重なり意外と美しいハーモニーを奏でた。
(な、なんか一気に居心地が悪くなったんですけど、どういうこと!?)
やはり平社員が言いたいことを言い放ったのが悪かったのだろうか。
背中にじっとりと汗が浮き、思わず肩をすぼめる。
そんな私の前に成瀬がずいと立ちはだかり、有馬取締役に向き合う。
「ダメですよ。この人はあなたにはあげないから。僕がもらうことにもう決まってる」
「春人、勘違いしていないか? なにも彼女を私のものにしようと言っているのではない。ただ秘書として私の補佐をしてもらうと、あくまでもビジネスの話だ」
「いいや、怜司さんは気に入らない人を側に寄せ付けない人なんだ。こんなに性急に秘書にしようとするなんて、絶対に先輩を気に入っているんだ!」
成瀬が言い切った途端に、有馬取締役が口を閉ざし眉間に皺を寄せ、何かを考えるようにあごに手を当てる。
それからすぐに彼は顔を上げて言った。
「自分では自覚がなかったけれど、そうかもしれないな。確かに柴崎さんのことは小気味良い人だとは感じているようだ。私に対しても物怖じせず、きちんと自分の意見を言える。それに清楚で優しい雰囲気。……今、気がついた。あなたは私の妻にふさわしい人かもしれない」
「はあぁぁぁ!?」
成瀬と私の悲鳴にも似た驚きの声がピタリと重なり意外と美しいハーモニーを奏でた。

