一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「もちろん俺が欲しいのは先輩。先輩を俺にくれる?」

 まるで子どもがおもちゃやお菓子をねだるような無邪気な言い方をした成瀬に、思わず両手を握りしめる。

(なんで今、そんな可愛い言い方をするの? 可愛いと思ってしまうじゃない)

 いいよ、いいよ、なんでもあげるよ、と言いたくなる。

 本当にこの男は最初からずるい。
 私の心を無遠慮に揺さぶり、勝手に上がり込んでくる。

 遠慮知らずの可愛い後輩。


 ――負けたなぁ……。


 一枚も二枚も上手のこいつに、勝てるすべなんて最初からなかったんだろう。

 今更抵抗したって、どうにもならない。私の中にこいつが住み着いている。

 もうゲームはエンディングに向かって一本の道しかないのだろう。

 はあああ、と盛大な溜息を吐き出した後、私は思いきり不機嫌な表情を作った。

 そして愛想も可愛げもない言い方で告げる。

「もう、好きにすれば。あんたには負けたわ」

 裏切りだと思っていたことも、手管に負けないと抵抗していたことも、全てもうどうでもいい。

 私は目の前のこの可愛いくせに格好いい後輩が好きなんだ。

 この先のエンディングが幸せに向かうのか悲劇に向かうのか、もうどうでもいい。彼が側にいてくれるのなら、もうどうでもいいと思えた。