一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「それは……多分、簡単なことじゃない。先輩の仕事ぶりを見ていればわかる。自分のプライドや周囲の目より、それよりも会社全体のことを考えている。ちゃんと下の者が仕事をしやすくなるように指導してくれるし、揉めた案件も固執せず、かといって放り投げず、相手と俺が滞りないように心配りをしてくれていた」

 重ねた手に力を込めた成瀬は、一層真面目なトーンで更に言葉を紡いだ。

「俺は、そうやってちゃんと芯を持って生きている先輩を尊敬します。先輩が好きです。絶対に大切にするから、俺と付き合ってください」

 私はうつむいて目を閉じる。
 そうしなければ涙がこぼれそうだからだ。

 成瀬が、そんな風に見てくれていたと知って、嬉しいというよりも胸が締め付けられている。痛いほど心がギュッと音を立てている。

 裏切られたはずなのに、それなのに成瀬の全てを信じて受け入れてしまいたくなるこの気持ちは、なんなのだろう。


 信頼してもいいのだろうか?

 男なんて……必要ない、信じないと、心の奥で叫んでいる私が消えていきそうで怖い。


 答えが見つからないまま黙り込んでいる私の手を、成瀬は引き寄せ私を包み込むように抱きしめ、そして耳元で囁いた。

「やっぱり先輩の返事は聞かない。俺がダメだ。先輩じゃないと俺、ダメだよ。好きとか嫌いとか、そんなんじゃない。先輩のいない人生なんて考えたくない」

 だから、と少しだけ固い口調になった成瀬が、抱きしめながらはっきりと言った。

「俺と結婚して、先輩。この手を離したくないんだ」

 その一言に息が止まる。