一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「やっと目、開けてくれた。先輩、聞こえてた? もちろん冗談ですよって言ったの」

 言葉を失っている私に、成瀬はもう一度言った。

「先輩、お願いだから、俺と付き合ってくれませんか? 俺の彼女になってください」

「…………は?」

 長い空白の時間を空けた割には、間抜けな声が出てしまった。

 すぐにムッと眉をつり上げる。

「あ、あんた何を言ってるのか自分でわかってるの? あんたはスパイとして潜入していたんでしょう? この後はまた元のところに戻るか出て行くかどうにかなるんでしょう? それで私に付き合えと? スパイとかそんな裏工作するような人とは金輪際関わり合うのはごめんだわ!」

 グイと力を込めて成瀬の肩を押しのけようとしたけれど、逆にギュッと力を込めて抱きすくめられてしまった。

「それは……先輩に内緒だったのはごめんなさい。先輩がターゲットにされているのは、俺もすっごく辛かったんですよ。なんとかして助けたいって焦ってしまって」

「はあ? あんたに助けてもらおうなんてこれっぽちも思っていなかったわよ。バカにしないでよね。女がみんな男に頼ると思わないで欲しいわ」

「ほらほら、そういうとこが先輩の魅力なんですよ」

 ニコッと笑った成瀬に、私はどん引きした顔をした。