一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「……成瀬、ありがとう、助かったわ」

 はあ、と重たい溜息と共にお礼を告げた途端、私は足から崩れ落ちる。
 徒労感に似た疲れと目眩に襲われたのだ。

「先輩っ!」

 慌てて駆け寄り私の肩をつかんだ成瀬の背後で玄関の扉がパタリと閉じる。

 その音がやけに耳に響く。

(ああ、成瀬と二人きりになりたくないのに……)

 閉じられた扉の音は、私の逃げ口が閉じられた音に聞こえた。





 私をベッドに横たえた成瀬は、そのままベッドの傍らに腰を下ろす。

 今すぐ帰れ、と言いたいのに、それを口にすることは決してできないのだと自分でもわかっている。

 ベッドまで運んでくれた恩があるから。
 宗一郎を帰らせてくれたから。

 心の中でそんな言い訳をして、私は成瀬がここにいることを肯定する。

 罵るつもりだったのにきっかけを失い、私は額に手を当て目を閉じた。

「イヤだわ。成瀬に文句を言うつもりだったのに、情けない」

 わざとムッとした調子で告げた私に、成瀬はクスクスと笑う。

「はい、俺も先輩に罵られて追い出される覚悟で来ました」

「そうなんだ、じゃあ遠慮なく追い出していいのね」

「それは勘弁してくださいよ。こんな様子の先輩を放っておけないです」

 成瀬は手を伸ばし、額に乗せている私の手の上に手を重ねる。