一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「薫の気持ちも確認せず勝手なことを。こんな人間に薫は任せられないな」

 それからすぐに私に顔を向ける。

「いつでも僕を頼ってくれていいよ。薫は僕が好きなんだってちゃんとわかっているからね。こんな男にひっかかっちゃいけないよ」

「まだ言うか、かすかすのピーマン頭! おまえがスト-カーだろうが! もう二度と来るな! 綾乃を泣かせるな! 出て行け、バカ!」

 罵れば体に黒い靄が広がる。

 気分が悪くなるけれど、言わずにはいられなかった。

「そんな……薫、本心を話して欲しい」

「今すぐ帰らないなら、あんたの母親にも連絡するけど? 綾乃さんの婚約者がしつこくて困ってますって。本気で二度と私に関わらないで。それが私の本心よ」

 最後は疲れ切った疲労の滲む声音になってしまった。

 もういい加減疲れてしまい、頭の芯が痛みを発している。

 このアホ男は本気で話が通じていない。こんなバカのことを私はいつまでも気に掛けていたのかと思えば、自分が情けなかった。

 宗一郎はしばらく私と成瀬を交互に見ていたが、成瀬が「どうぞお帰りください」と言わんばかりに手を外に向けたからか、のろのろと背を向け、やがてすごすごと引き上げていった。