一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「ああ……あの時、薫と一緒にいた……。会社の後輩だったね」

「まあそうですが、特別な後輩ってことで、割り込ませてもらいました」

 成瀬が軽く肩をすくめ笑ったが、宗一郎は変わらずに顔をしかめている。

「特別とは? 薫は僕にはっきりと彼氏はではないと言ったけれど? 君の思い違いか、もしくはストーカーかな?」

「あはっ、そうですね。今はまだ俺の一方通行かもしれないけど、これから先輩には俺の彼女になってもらいますから。だから帰ってもらえますか?」

 成瀬がとんでもないこと言い出したので、私は抗議しようと息を吸い込んだけれど、素早く成瀬が右手を挙げ私を制した。

「先輩、後で話ましょう。今は彼と俺で話をさせてください」

 出鼻をくじかれた私は、グッと喉の奥に言葉をひっかけてしまい、黙るしかなかった。

 すぐに宗一郎へと向き合った成瀬は、爽やかな笑みを浮かべる。まるで成瀬の方が年上に見えてしまうほど、余裕のある態度だった。

「先輩はもうあなたなんて何とも思っていないそうですよ。それにこれからは俺が先輩をもらい受けますから、どうぞあなたはお引き取り下さい。ていうか、彼女さんがいるならその人を大事にしてあげたらどうですか? 俺なら一生一人の人を大切に守り抜きますけど?」

「そ、それは僕だって当然だ。君に言われる筋合いはない」

「なら先輩には二度と近づかないでくださいね。俺のものですから。俺が一生守りますから、もし次に来たら容赦しませんよ? あなたはあなたの大切な人だけを守ってください」

 鍛えられている身体を持つ成瀬は、笑みを浮かべているけれど瞳は笑っていない。

 気圧されたのか、うっ、と喉の奥で呻いた宗一郎は不快感をあらわに眉間に皺を寄せた。