一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「ねえ薫。そんなに興奮しないで、ちょっと話をしよう? 薫は、心の中ではきっと僕のことを求めているんだよ。新しい恋もせずに一人でいるなんて、寂しいはずだよ?」

(こ、これだけ言ってもまだ理解しないのか、この男は!!)

 呆れるというよりは愕然とする。

 ストーカー被害に遭った人が「こちらの言うことは全てスルーして、いくら断っても超理論で自分に恋愛感情があると言い張る」と言っていたが、このことか!

(おまえはストーカー予備軍か!!)

「ね? 薫だって誰か隣いて欲しいと思うだろう? 綾乃だって僕と薫なら、理解してくれるよ」


「するわけないでしょう。そんな屁理屈」


 そうピシャリと言い放ったのは、私ではない。

 宗一郎の背後から、鼻で笑った男――成瀬だった。


「成瀬っ!」


 成瀬の姿を見た途端、心の奥深くでキュッと音がした。

 来てくれたんだという思いと、裏切ったくせに来たんだとの思い。

 せめぎ合うくせに、私は成瀬から目が離せずにいる。そしてその理由をもう知っているのだ、悔しいことに。


 息を止め、目を丸くしている私をチラリと見た後、成瀬は宗一郎に向き合う。

「お話中、お邪魔して申し訳ありませんが、先ほどから彼女、いやがっているように見えますが?」

 割って入った成瀬に宗一郎は顔をしかめる。

「君は? 薫の知り合いかな」

「ええ、以前も一度お会いしてますよ、水族館の近くで」

 成瀬の返事に宗一郎は思い至ったようだ。