一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 宗一郎をできうる限りの軽蔑した眼差しで見上げ、そして有馬取締役もびっくりな冷たい声を出した。

「バカじゃないの? あんたの頭の中、蛆でも湧いてんの? 私、一欠片も気持ちなんか残ってませんけど。何が僕を待っていた? ふざけんな。あんたを待つくらいなら、宅急便を待つ方がよっぽど有意義だわ」

「え……ちょっと薫?」

 たじろぐ宗一郎に向かって、私はまだまだ言いつのる。

「入っていいわけないでしょう? 一歩たりとも入るな、汚らわしい」

 玄関を開け放したまま一歩も入れてなるものかと、私は彼の進入を全身で阻む。中を覗き込まれるだけでも強い嫌悪感を覚えるのに、入るなんてとんでもないことだ。

「気安く名前を呼ぶんじゃないわよ。いつまで彼氏気取り? 私はあんたと綾乃のことを許すことなんかないけど、それでも綾乃を選んだのなら、全身全霊で彼女だけを大切にしなさいよ! あんたは関係のない男だけど、綾乃は私の友達なの。あの子を裏切るつもりなら、全部綾乃にぶちまけてやるから」

 息が乱れて肩が上下している。お隣にも上下の部屋にも丸聞こえかもしれない。


 こんなに不誠実な男だとは、自分が付き合っている時には全く知らなかった。


 彼氏を奪った綾乃を許すことはできないけれど、それでも彼女がこんな奴のせいで不幸になるのはイヤだった。

 大人しいあの子は、きっと私以上に傷ついてしまう。