一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「薫、入っていい?」

 中を覗き込むように見た宗一郎は、またすぐに破顔する。

「中もあんまり変わってないね。ずっと僕のことを待っていたんだね。今まで待たせてごめんね」

(こ……こいつは何を言っているんだ?)

 唖然としたまま、私は働かない頭で考える。


 これはなんの冗談だろう?
 宗一郎の格好をした成瀬なのか?

 いやいや、そんな非現実なことはあり得ない。

 だったら今の言葉は宗一郎の言葉なのか。

 宗一郎は決して冗談を言うような人ではない。人の軽い冗談さえも本気にしてしまうほど真面目な人だった。

 ならば、本気でこんなふざけたことをしゃべっているのか?


 この人は――私がずっと愛していたこの人は……いつの間にか脳みそが腐ってしまったのだろうか。


 綾乃と間もなく結婚するだろうに、何を言い出しているんだ、このドアホは。

 しばらく完全停止していたけれど、宗一郎の頭が湧いている意味不明なセリフに、沸々と体の奥のマグマが活性してくる。


 冗談じゃない、冗談じゃない。

 手酷く振った女が、いつまでも自分を好きだと思っていたら大間違いだ!

 いつまでも自分を待ってくれていると思うな。

 少なくとも私はそんなしおらしい女でもなければ、未練たらしい女じゃない!