一寸の喪女にも五分の愛嬌を


 どんな顔をすればいい?

 不機嫌? それとも暗い顔? もしくは冷笑?


 グルグル回ってばかりで結局答えが出ないまま、玄関までの短い廊下で百面相をする。

 顔も見たくないと言い放ってやるべきか、それともバカと罵ればいいのか。

 最初の一言はどうしよう……。

 ドクンドクンとうるさく響く心臓の音をかき消すように、私は扉を開く。


「うるさい! 何度も鳴らすんじゃないわよ!」


 結局、こんな言葉しか出てこない。けれど、開口一番の悪態を吐いた私は、その場でフリーズして息を止める。

 目の前に立っているはずの成瀬は存在せず、そこには成瀬よりも背の高い男、宗一郎が立っていたのだ。


「なっ……」


 どうして宗一郎がここに?

 なぜ……成瀬じゃないの?


 それ以外、何も考えられずに私は呆然と宗一郎を見上げていた。

 絶句したままの私に、宗一郎は以前と少しも変わらない穏やかな笑顔を浮かべる。


「薫は変わらないね、その口調。飾らない薫が好きだよ」


 思考停止。機能停止。


 警告音も鳴らないまま私の全身はシャットダウンして機能不全に陥った。