一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 ふう、吐き出した吐息の後、改めて成瀬のことを考える。

 もう人事にいる必要がなくなるのだから、また福岡の営業に戻るのか、それともこのまま本社で勤めることになるのか、彼の先行きを私は知りようがない。

 できれば同じ場所にいたくはない。
 だから福岡に戻ってくれることを願う。

(ううん)

 フルフルと首を横に振り、考えを打ち消す。

 顔も見たくないし話もしたくない。それなのに、遠くへ行ってしまうと考えただけで胸が苦しいほど締め付けられる。

 側にいたいなんて欠片も思っていないのに、どういうことなのだろうか。

(見たくない。あいつとなんて話もしたくない……もう関わりたくない。これ以上……)

 ――私を惨めにさせないで……。

 包み隠さずに言う。


 私は……成瀬が好きだった。


 あいつが隣にいることが、心地良いと思っていた。


「二度目の裏切り、か」

 いや、正確には成瀬は裏切ったわけではない。

 別につきあってもいなければ、何か約束を交わしたこともない。

 ただ自分が勝手に成瀬を信用し、頼りにし、そして好きになっていただけのこと。

「あ~、バカらしい!」

 バフッと枕に抱きついてベッドに寝転がり、わざと大きい声を出す。

「バカ、アホ、まぬけ! 柴崎薫は大馬鹿者~!!」

 そのままギュッと目を閉じる。