一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 いつでも飄々として明るく、(失礼だが)つまらないギャグを言う課長のことを、急に頼もしく思いうと同時に、涙がこらえられなくなってしまった。

(やっぱり人事課の課長たる人なんだ。こんな人の下で働かせてもらっていたんだ)

 多分、寂しくなったのだと思う。

 この場所から出て行かなければいけないことが、急に寂しく思えたのだ。

 ペコリと頭を下げ課長の前から下がるや、ロッカーにも寄らずに放置していた鞄をつかむ。

 すぐに稲田さんが気遣わしい眼差しでこちらを見遣ってきたけれど、気がつかないふりをして忙しそうな空気に満ちている部屋を後にした。

 成瀬は追ってこなかった。

 そのまま私は会社から飛び出すと、憎らしいほど澄み切った青い空の下を、忸怩たる思いを抱きながら重たい足を引きずるようにマンションへと向かった。
 

 朝、急いで出てきたままの部屋は、少し乱れていて心も乱される。

 こんな時には一人暮らしでよかったとつくづく思う。

 誰にも関わられずに今は一人でいたい。

 高いヒールに疲れた足を投げ出すようにベッドに転がり目を閉じれば、今日のことが走馬燈のようによみがえってきてしまう。