一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「二人とも入って座って」

 先ほど聞いた声と同じどこか冷たいトーンで有馬取締役はソファーに座るように勧める。

 おずおずと座る私とは対照的に成瀬はドサッと遠慮せずに座り、はあ、と大きく息を吐き出す。

「なんだ、不満そうだな。春人」

 そう言いながら向かいに座った有馬取締役は、私へと目を向けたが、彼が成瀬のことを下の名前で呼んだことで、私はどうにも居心地が悪い。

 私が知るべきではないことが、ここに横たわっている気がして、今にも逃げ出したくなる。

 そんな落ち着かない様子の私をしばし見つめた後、有馬取締役はおもむろに口を開いた。

「柴崎さん、今日はご協力ありがとうございました。あなたのおかげでようやく解決に至りそうです」

「解決……ですか? 私の処分についてということですか?」

「え? あなたの処分?」

 わずかに眉間にしわを寄せた後、有馬取締役は成瀬に顔を向ける。

「ああ……なるほど、何も聞いていないのですね。春人は優秀だな」

「どうも」

 軽く肩をすくめ、ぞんざいに答える成瀬はまた皮肉な笑みを口元に浮かべている。

 一度深くソファーに座り直し、有馬取締役は両肘を膝の上につき、身を乗り出し口を開いた。

「あなたは人事課なのでご存じかもしれませんが、この一年半の間に、四人の優秀な社員が他社に取られてしまいました」

 ハッと目を開いた私は、すぐに聞いた。