一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 私が人事課に戻ってから、三十分ほどで課長と成瀬は一緒に部屋に戻り、成瀬はすぐに私を呼んだ。

「先輩、もう一度呼び出しです」

「……わかりました」

 きっと私に対する沙汰を言い渡されるのだろう。

 課長が立ち会わないことが不思議だけれど、理由は不明だが私の件については上層部に委ねられているのだろう。

 すぐに立ち上がる私の隣で、成瀬はなぜか微妙な表情を見せながら、「俺も一緒に行きますから」と並んで歩き出す。

「あの……取締役の個人的な呼び出しなんですが、イヤなこと言われたりしたら俺が先輩を守りますから、心配しないでください」

 どこか歯切れの悪い成瀬の言い方が気になったけれど、それ以上に「取締役の個人的な呼び出し」という部分にひっかかる。

「個人的ってどういうこと?」

「まあ、それは……あの人のことは俺もちょっとよくわかんないんですよね」

(あの人?)

 その言い方は取締役を呼ぶにはふさわしくない言い方だ。

 しかも口元を引いて苦笑する成瀬の顔つきは、とてもプライベートな空気感を持っていることが気になった。

 先だって歩く成瀬と共にエレベーターに乗り込み、やがて取締役の扉の前へ立つ。

 軽くノックをした成瀬が、「失礼します」と扉を開く。

 成瀬の一歩後ろで控えるように立つ私は、さすがに緊張を隠しきれないでいる。

 開かれた扉の中には、有馬怜司取締役がこちらを見据えて座っていた。