一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 パタンと静かに会議室の扉を閉めた後、自分の足が震えていることに気がつく。

 気が緩めば涙がせり上がってきそうになる。


 ――怖かった。


 ぐるりと鋭い視線と真偽を問い詰めるような空気は、今まで味わったことのないほどの緊張感と圧迫感を覚えた。

 断崖の岩場で、孤立無援で立たされているような、そして自分の言葉の選択ミスを一つでもすれば、強い風が吹き付けてあっという間に奈落へと落とされてしまうような、そんな感覚だった。

 正直な言葉をもし言えるような可愛い女ならば、「怖かったの」とぽろぽろと大粒の涙でも流せているだろう。

 冷たくなった体の中、最後に成瀬に触れられた背中がふんわりと温かい。

 見知った後輩がいること、それだけではない安心感を成瀬は与えてくれる。

(って、昭和おやじの課長もいたのにね)

 目の端にも入っていなかったことに、フッと笑ってしまった。

 そして笑った途端に目の端に涙が浮かぶ。

「ああ、やだ。なにこれ」

 グッと浮かんだ涙をぬぐい、エレベーターへと歩き出した。