一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 とにかく、理不尽を押しつけられるいわれはない。


 さあ、かかってきやがれ!


 心で叫んでゴングを鳴らした。

 ところが、有馬取締役は思わぬ言葉を発した。

「柴崎さん、稲田さんに転職を勧められたのは事実ですか?」

「え……?」

 噂の件が真っ先に聞かれると思っていただけに、目をぱちくりとしてとっさに二の句が継げない。

「どうなのですか? 成瀬に言ったことはでまかせなのですか?」

 一気に問い詰める口調になった有馬取締役の瞳が、私の中にある真偽を確かめようとしているのがわかる。

 彼は真剣に問いかけている。

 それならばきちんと答えるしかない。

 その結果が稲田さんにとって良いことなのか悪いことなのか、私には判断はつかないけれど、きっと隠すことはもっと悪い結果を招くとしか思えなかった。


 私はゆっくりと頷く。


「はい。確かに稲田さんは今の私の窮状を慮って転職を勧めてくれました。同僚として、とても気にかけてくれています」

 はっきりとそう明言した途端、会議室の中にいる面々から吐息がこぼれた。

「……? そのことが、なにか問題でも?」

 緊張したような弛緩したような吐息の意味を計りかねて、問いかけたけれど、その続きを私は聞くことができなかった。