一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 他愛もない噂だと、女子高生のケンカじゃあるまいしと、勝手に言っておけと放置したのは私のミスだ。

 つまらない噂なんてそのうちに消え去るだろうと安易に考えていたけれど、大人になってから流される噂は、それなりに重みがあったのだろう。

 学生や子ども同士のあやふやな噂話ではなく、噂を信じた相手が大人ならば、それはいつの間にか重みを増していくのかもしれないと、そのことに思い至らなかった。

 放置してはいけなかった。

 しっかりと「違う」と闘わなければいけなかったのに、面倒だと逃げた。

 弁解も撤回もしない時点で、私はその噂を認めたことになってしまっていたのかもしれない。

 そして私抜きで話が進められるということは、もうそれは真実として会社では受け入れられているのだろ。


(……やっぱり、納得いかない)


 枕から顔を上げた私は、スマホを睨み付ける。

「こんなの、納得できない」

 声に出すと、気持ちが奮い立つ。


 このまま意気消沈して、事実無根の噂如きで処分されてたまるものか!

 放置していたのは悪手だったけど、一生をこの会社でとまで思っていたのに、ポイ捨てされてたまるものか!


 急いで顔を洗い、手早く身支度を調えると、いつもよりもかかとの高いヒールを履く。

 目は少しだけ腫れているけれど、きっちりと化粧をしたから、それほど目立たない。