一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 そういえば受付嬢の一人が、会社役員の親戚だとか聞いた覚えがある。

 彼女から、素行の悪い社員がいると噂を流されたのなら、今の社内の様子を調べれば、これだけおおっぴらに噂されている私は、処分対象になることは充分あり得る。


「来なくて結構よ。私から会社に出向くわ。成瀬からではなく、ちゃんと話を聞きたいから」

『いや……会社は……。じゃあ、今夜七時に先輩の最寄り駅で待ち合わせ、それでどうでしょう?』

「……わかった。それでいいわ」 

 冷たい口調だと自覚しながら、押しつけるように告げて通話を切った。


 こんなことならば、さっさと稲田さんの紹介を受けておけばよかった。

 懲戒解雇などになったりすれば、きっと次の職場でも警戒されてしまうだろう。

 それどころか、受け入れ先もなくなる可能性だってある。

 ステップアップどころの騒ぎではない。

 悔しさに目尻に涙が浮かぶ。

 スマホをベッドに投げつけ、それから私は枕に顔を押しつけて、声を殺して泣き続けた。


 大人になってもこんなに泣けるなんて。


 宗一郎と別れた時は、泣くよりも絶望に近くて、涙なんて流せなかった。

 大好きで大切だった二人に裏切られたことは、私の感情を壊してしまったらしく、怒りよりも悲しみよりも、絶望だけが身の内に満ちていた。


 今は……ただ、ただ悔しい。