一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「と、とにかくちょっと疲れたから、私は休むわ。成瀬は適当に食べてて。お酒も冷やしているから、遠慮しないで好きに飲みなさいよ」

 抱きつく成瀬を引きはがし、ベッドに横になろうとしたのに、成瀬はおもむろに私をお姫様抱っこで抱き上げた。

「きゃっ」

 いきなり持ち上げられて驚きの声を上げてしまった私を、成瀬は顔を覗き込み笑う。

「先輩、可愛い声出すんですね」

「急に抱き上げるから驚いたの! バカ!」

 八つ当たりする私を見下ろす成瀬の瞳は、やけに優しくてそれでいて甘くて、どうしようもないほど胸が疼く。

 きっと顔は熟れた林檎のように赤く染まっているだろう。

 恥ずかしくてプイと顔を背けたら、クスッと成瀬が笑う。

 そっとベッドに降ろしてくれた後、成瀬はそのまま隣に座り、額に手を当てる。

「熱は落ち着いたかな。でも無理しないで。明日は会社を休んでください」

 優しく額に口づけを落とし、成瀬はベッドから離れていく。

 彼の手を取って引き留めたい衝動を、私はじっと身動きをとめてやり過ごす。


 どうしても素直になれない。


 こんな時、普通の女の子ならどうやって甘えるのだろう。

 それはみんなが普通にこなせていることかもしれないけれど、その方法を愛想も愛嬌も持たない私にはわからない。