一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「違う、早川さんは関係ないの。私に転職を勧めてくれたのは、稲田さんよ。彼女が知り合いを紹介してくれるって。こんな会社よりももっと能力を活かせるところにいくべきだって」

 成瀬の鼓動が一気に加速したのが耳に伝わり、不思議に思い顔を上げた私は、思わず動きを止めた。

 成瀬は息を止め、そしてそのまま凍り付いていた。

 その様があまりにも異様で、私は成瀬を見上げたまま息を止める。

 やがて、「……稲田さんが」と、ぼそりと呟いた成瀬から、一気に力が抜けた。

「な、成瀬!? どうしたの?」

 はあああ、と大きな息を吐き出した後、成瀬は私に全身を預けるようにもたれかかる。

 グッと彼の重みを受けて、私も体勢を崩した。

 二人してドサッと床に転がる。


 そう、私は押し倒されたのだ。


 ボボボボっと一瞬で血液が沸騰してしまう感覚。

 まるでウブな少女のように心臓が高鳴り、そんな自分にいたたまれなくなり叫んだ。

「成瀬! 重たい!! あんた、私が体調悪いことわかってるくせに、何を押し倒してくれてんのよ! 今すぐパンツ一丁で出て行け!!」

 成瀬にのし掛かられたまま思い切り叫んでやると、ハッと覚醒したのか、成瀬は慌てて私の上から飛び退いた。