一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「そ、そんなの、あんたに関係ないでしょ」

 可愛げのない私は抵抗を試みる。

 別に稲田さんのことを教えるのは容易いけれど、易々と成瀬の言いなりになるのが、酷く悔しい気がしたのだ。

 戒められている手首を振り払おうとしたけれど、逆に強く引き寄せられ、気がつけば成瀬の胸に倒れ込まされていた。

「なるっ――!」

「先輩、俺……先輩は手放さない。心配しないでよ。先輩が居づらい雰囲気は俺がなんとかする。だから先輩に転職を持ちかけた人を教えてよ」


 なぜ?

 どうして成瀬はこんなにも私に対して必死になっているの?


 からかっている?
 思わせぶりに態度で翻弄している?

 私はどうして彼の言葉を素直に信じようとしない?
 また裏切られたくないから?


 思考が混乱して今、何を最優先に考えればいいのか答えが見つからない。

 言葉を失ったままじっとしている私に、成瀬はそっと問いかける。

「あの人? 総務課の、あの早川って人?」

 やけに早川さんとの会話を成瀬は気にしている。


 もしかして……嫉妬している? 


 なんて考えた自分がみっともなくて、恥ずかしい自分を誤魔化すように早口になる。