一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 サラリと告げることができてホッとした私とは対照的に、成瀬の表情は一瞬で凍り付き、すぐにその目が鋭く細められた。

「先輩、それ……詳しく聞かせてよ」

 急に低くなった成瀬の声に、失敗したような気がした。

 もしかして言ってはいけないことを言ってしまったのかもしれない。

 これは大間違いの選択だったのかもしれないと、そう思わせる成瀬の声と眼差しだ。

 直接会ったことなどないけれど、まるで切れ者の刑事に睨まれている気がする。

「く、詳しくって」

「きっかけは何? 今、会社で女子が流している噂のせい? 居づらいから? そして……」

 一度唇を閉じてから、成瀬はハッキリと告げた。


「誰かに誘われたんでしょう? それは誰?」


 ゴクリと私の喉がなる。

 いつもの成瀬の持つ雰囲気からはかけ離れた鋭い眼差しに私の心臓は早鐘を打つ。

 彼は犯人を追い詰めている刑事。そして私は容疑者。

 二人の間にはそんな空気が流れる。

 これ以上、何かを失敗するわけにはいかないと、私は口を閉ざしてうつむく。

 すぐに成瀬の腕が私の手首をつかんだ。

 逮捕された瞬間は、きっとこんな感じなのだろう。


 ――逃れられない。

 
 私は、目の前の彼の追求からはもう逃れられないと覚悟した。