一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 成瀬の買って来てくれた総菜をもそもそと口にしている内に、私の中の覚悟が決まる。

(やっぱり、今伝えよう)

 顔を見て、触れられて、声を聞いているとついこの心地良い時間を引き延ばしたくなってしまった。

 けれど今日は最初から覚悟していたはずなのだ。


 だから、ちゃんと告げよう。


「成瀬」

「なに、先輩。もう食べられない?」

 呼びかけに即座に反応して箸を止める成瀬を真っ直ぐに見つめた。

「あのね、今日は話があって……そのために会う約束をしたの」

 ピリッと微量の電流が走ったような空気が私から放たれたのを自分で感じる。

 成瀬のまとう穏やかな空気が、一瞬で引き締まる。

「何? いい話? イヤな話?」

「ん~、成瀬にはどちらかといえばいい話かな?」

「じゃあ聞く」

 なにそれ、と言いそうになりフッと笑ってしまう。

(イヤな話なら聞かないつもりだったの?)

 だだっ子のような成瀬の返事に笑った途端、引き絞られていた緊張感が弾けて消えた。

 今なら、なんの気負いもなく言えると、私は淡い笑みを浮かべて言った。


「仕事、辞めることにした。転職するわ」