一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「熱出てても酒を飲もうとするんなんて、先輩らしすぎる。しかも止められて舌打ちとか、なんでそんなに可愛いんですか」

 あはははと笑う成瀬に思い切りしかめ面をしてしまう。

「あんたの脳内は虫が湧いていると思うわ。舌打ちする女が可愛いとか、もう腐っているでしょ、色んなところが。ご愁傷様」

「それそれ、そうやって毒を吐く先輩が可愛いんですよ」

 何を言ってもこんな言い返し方をしてくる成瀬に呆れながらも心の奥がくすぐったくなり、顔が火照ってくるのがわかる。

 ツンと横を向いた私の頭を成瀬はなでなでと優しく撫で、そっとまた額に手を当てた。

「少し食べて、それから薬飲んで」

「母親ですか、あんたは」

「そこは彼氏ですかって言って欲しかったな。さ、食べましょう」

 自分のコップにもミネラルウォーターを注いだ成瀬に、ビールを勧めたけれど固辞されてしまった。

「先輩と一緒に飲むから酒は美味しいんですよ。また次回に楽しみは取っておきますから」


(次回は……ないのに……)


 目の前で無邪気に笑っている成瀬を見ていると、やけに悲しくなる。

 彼が笑えば笑うほど、自分の中の何かが削られていくようだ。