一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 成瀬に気づかれないうちにと、急いで涙をぬぐう。

 心配させたくないし、泣いていることを知られたくない。


 私は……きっと寂しいんだ。


 成瀬との関係が終わってしまうのが、きっと寂しくて悲しいんだろう。

 優秀なくせに可愛くて、男前のくせに気遣いができて、そして私のような喪女に優しくかまってきてくれてる、成瀬春人という男に、私はもう惹かれているのだ。

 はっきりと自覚する。

 終わりを決めたからこそ、私は素直に自分の想いを自覚し、そして気持ちが固まった。


 総菜を並べ終えた成瀬が「どれなら食べられそうですか? あっさりしているのだけ選びますね」と取り皿に小分けにしてくれているから、私はふらつく体にむち打って、冷蔵庫へと向かった。

 しかしすぐに成瀬にとらえられた。

「先輩は座っててよ。俺が全部するから。あ、あと酒は禁止ですからね」

 見透かされた。

 転職のことを話すのに、お酒の勢いでも借りたいとビールを取りに行こうとしたのがバレていたようだ。

「ちっ」

 小さく舌打ちしたら、成瀬に思い切り笑われた。