一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「他愛のない話よ。ただ女子社員から私が色々と言われている責任が自分にあるんだなんて言ってくれて」

「……責任がって、彼、関係あるの?」

「全くない。ただ総務の女子ともめたことが発端だから、その時に止められなかったことを気にしてくれていたみたい」

「そう……なんだ」

 成瀬の声のトーンが落ちたことに首を傾げつつ、私は気分を変えるようにわざと明るく笑う。

「ねえ、何か食べるもの買って来てくれているんでしょ? 食べよう」

 急な話の転換に「え?」と成瀬は戸惑いを見せたが、すぐに「この話はここでおしまい」という私の意図をくみ取ったようだ。

「もう……先輩の返事、はぐらかされた」

 苦笑しながらも、それ以上は踏み込んでこようとはしない。

 成瀬のこの絶妙な距離の取り方が私にはとても心地良い。


 ベッドから成瀬が立ち上がり、買い出してきた袋から様々なパックを取り出して並べる。

 今日は一流レストランの物ではなく、会社の近くにあるお弁当屋さんの総菜だった。

 どれにしようかと成瀬が総菜を選んでいる姿を想像しただけで笑えてしまう。

 かいがいしく動いている成瀬をぼんやりと見ていると、私は我知らず涙がこぼれていた。 

 笑っているはずなのに、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちていく。