一寸の喪女にも五分の愛嬌を

「あの人? 誰の話?」

「今日話してたあの人、確か総務の人」

「ああ……早川さんか。好きじゃないわ」

「でも二人きりの時、ただならぬ雰囲気だった」

「そう思ったのに、よく割って入ったよね」

 ついそんな言い方をして、すぐに後悔する。


 本当はありがたかった。


 助け出してくれて本当に嬉しかったし助かった。お礼を言おうと思っていたのに、可愛げのない私は、ついイヤミな言い方をしてしまう。

 この悪癖にうんざりしつつ、私はすぐに言葉を継ぎ足した。

「成瀬、ごめん……。本当は助かったの。あの時、困っていたから、助けてくれてありがとう」

 なぜか成瀬は深刻そうな表情になり、体勢を変えて私に背中を向け髪に両手を突っ込んだ。

「……先輩、あの人となんの話をしていたんですか?」

 聞きづらそうに歯切れの悪い問いかけを投げる成瀬の背中が、なぜかひどく落ち込んでいるように見えてしまう。

 私は誤解したくなる。

(私たちの関係が気になるの? それは……嫉妬?)


 ううん、と否定する。


 ゆっくりと起き上がり、ふう、と重たい息を吐き出した。