一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 けれど成瀬に出会い、少しだけ、ほんの少しだけその扉は緩んだ。

 それももう終わり。

 私は会社を辞め、そして成瀬との関係も終わる。

 また元にもどるだけ。

 一人でスマホゲームで癒やされるだけの女に戻ればいいだけなのに、どうしてこんなに胸が痛むのか、自分の気持ちが理解できない。

 眉根を寄せて難しげな表情を浮かべる成瀬から視線をはずさずに見上げる。

「成瀬がどんなつもりで軽々しく私を口説くのかは知らないけど、私は絶対に男にはもうなびかない。だからもうかまわないで」

「軽々しくって、俺、そんな風にみえる? 本気で言ってんの?」

 少しムッとした口調になった成瀬に、つい言わなくてもいい意地悪を言ってしまった。

「可愛い女子社員に甘いこと言ってたの、私が聞いていたのを知ってるよね? 誰にでもあんな態度を取っておいて信用しろって言われても無理」

「それは……ちょっとワケがあって……、てか、先輩はあの人のこと好きなの?」 

 図星を付かれたのかモゴモゴと言いよどみ、すぐに不自然に話題を変えてきた。

 成瀬がなんのことを言い出したのかわからず、私は目をしばたたく。