一寸の喪女にも五分の愛嬌を

 私を見つめる彼の瞳の中にえも言われる色香を見いだした瞬間、もう捕らわれていた。


 逃れられない成瀬の罠に。


 彼の罠から逃れるように、そっと目を閉じる。

 肩に置かれている成瀬の指先にわずかに力が込められた。

 ドクンドクンと鳴り響く胸の音がうるさい。

 笑われるほど響いているに違いない。

 まるで十代の少女のように、私は緊張している。

 痛いほど胸が締め付けられている。

 小さくベッドを揺らして、成瀬が私へと顔を寄せた。

(これ以上成瀬に深入りさせてはいけないのに……)


「先輩……」


 ささやいた後、成瀬は唇を重ねた。


 指先が痺れた。
 全身が細く甘い糸で絡め取られたように、体の自由がきかない。

 動けない私の肩から成瀬の手のひらが滑り落ち、腰の辺りを抱き寄せられた。


「ダメ……やめてよ」


 わずかに離れた唇の隙間から掠れた声で拒絶する。

 それなのに成瀬は私の言葉を無視して再び唇を重ねた。


「ん……っ」


 彼の胸を押しのけようと腕を伸ばしたけれど、成瀬の意外と鍛えられた体はびくともしない。

 深くなる口づけに頭の芯が痺れて力が抜けていく。